東京都港区・梶田眼科御中
梶田雅義様
2014.12.15   岡本隆博


ネットサイトに、貴殿のご執筆になる
「過矯正の見つけ方と適正矯正の仕方
 両眼同時雲霧法の活用マニュアル」
http://coopervision.jp/sites/coopervision.jp/files/Enhance%20Book.pdf
(2014.12.15現在)
という記事がありますが、その中で私が疑問に思った
ことについてお尋ねします。
なお、下記文中で《 》でくくった文は、
当該記事から原文のまま引用したものです。


質問1
《はじめに》のところに
《近視で過矯正に処方された眼鏡やコンタクトレンズを装用
している人は思っている以上に多く、全体の3分の1以上が
過矯正であるといっても過言ではありません》
としてありますが、まず、これについてお尋ねします。

1−1
これ、は内訳としては「メガネについても3分の1以上、
コンタクトについても3分の1以上」ということでしょうか。
それとも、別の内訳になるのでしょうか。
別の内訳になるのであれば、メガネとコンタクトに
分けた場合の、過矯正されている割合をお尋ねします。

1−2
その「全体3分の1以上」の「全体」とは、
下記のうちのどれでしょうか。

(  )a.日本全体
(  )b.貴院の患者さんで、眼鏡やコンタクトを
   使用している人の全体
(  )c.貴院の患者さんで、眼鏡やコンタクトを
   使用している人の中で、眼精疲労などを感じて
   いる人の全体

1−3
前の質問の回答が、もしもbであれば、
そのなかでcの人はbのうちのおよそ何割くらい
になるのでしょうか。


質問2
《オートレフラクトメータを正確に操作する》
の項の内容の中から……

2−1
オートレフの固視標の見方として、「ぼんやり見させるのではなく
しっかり見させるのがよい、なぜならぼんやり見ると眼が調節安静位
となる可能性があるから」という旨のことが書かれていますが、
箱の中で近くにあるような感じの視標を《しっかり》見ようとすると、
調節が惹起されるおそれが出てきます。
《ぼんやり》見させた場合と《しっかり》見させた場合での検出度数の
違いについてのデータがあるのでしょうか。

2−2
オートレフで良さそうな値が出ない場合も少なくないと
思うのですが、そのときにはどのように自覚検査を
すればよいか、の記述がありません。
その理由をお尋ねします。

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以下は《3.両眼同時雲霧法》の項の記述内容に
ついての疑問点です。


質問3
この解説では、オートレフ値を得たら、ただちに
両眼視による屈折検査に入っています。
しかし、両眼視(両眼開放)で自覚的屈折検査を
行なうには、たとえ立体視は不完全でも、少なくとも
「同時視と無理のない融像が実現されている状態」
となっていることが必須条件です。
そのためには、その屈折検査の前に、少なくとも
両眼視機能(特に眼位)についての定性検査や定量検査をし、
必要ならばプリズムを負荷した状態で、
両眼視での屈折検査を行うべきなのですが、
ここにはそのことについての記述が何もありません。
その理由をお尋ねします。


質問4
《1)2D以上の不同視がある場合は、片眼ずつの検査を行い、
モノビジョン矯正などを考慮する必要があります》
としてありますが、私はこれまでの検眼実務の経験からして
下記の点で疑問を持ちます。

 【参考書籍】 拙著書『眼鏡処方の実際手法』
       http://homepage1.nifty.com/EYETOPIA/books.html

4−1
左右差2D以上あっても、両眼開放で屈折検査を行なえる場合が
ほとんどであり、わざわざ調節が起こりやすい片眼遮蔽屈折検査を
行なうことの意義が感じられにくいですが、そう思われませんか。

4−2
左右差2D以上の不同視でも、どちらも同じ矯正視力が
出るようにしたメガネで快適に使ってもらえる場合も多いし、
うかつに強度側眼を多い目に低矯正してモノビジョン的な
処方にすると、非常に使いにくいメガネになることも
往々にしてあるのです。
それは、前眼鏡の度数に左右されることが多いのですが、
とにかく、左右差2D以上なら両眼開放での検査は無理、
としてしまうのは早計だ(適切な判断ではない)と
私は思いますが、貴殿はそう思われませんか。
思われないのであれば、その理由をお尋ねします。

 【参考資料】 「不同視矯正眼鏡の事例」
         http://www.ggm.jp/hudoushi/1412141.html

4−3
不同視眼の場合、上斜位を持つことが多いので、屈折検査に
入る前に、上斜位は忘れずにチェックすることが重要であり、
そのときに光学的な上斜位を検出してしまわない注意も
必要なのですが、それについてここに言及がないのは、
なぜでしょうか。
(その実際手法については、上で紹介した拙著書に
解説があります)


質問5
《2)オートレフラクタ測定値で1D未満の乱視は無視します。
乱視が1D以上の場合、オートレフラクトメータの値から
0.50〜0.75D弱い度数をオートレフラクトメータで
測定した乱視軸に一致させ検眼枠に挿入します。》
としてあり、その少しあとの《ここで得られた屈折値を
眼鏡やコンタクトレンズ処方時の基準とします》
という文までの説明を読みますと、
貴殿における、眼鏡処方のための屈折検査や、
それを基にした処方度数は下記の(1)〜(4)の
ごとくになるように読み取れます。

(1)自覚的屈折検査において、クロスシリンダーや
  放射線視標を使っての乱視の度数や軸度の測定は
実施しない。
(2)当然ながら、処方される眼鏡の乱視の度数や軸度
  については、自覚的屈折検査で得られる乱視の測定値が
  反映されることもない。
(3)オートレフでの乱視が1D未満であれば、処方される
眼鏡には乱視矯正が入らない。 
(4)オートレフでの乱視が1D以上であれば、
  その眼鏡処方における乱視度は常にオートレフ値よりも
  0.50D以上弱く、乱視軸度はオートレフが示した
  軸度のままである。

これまでの我々眼鏡技術者の眼鏡処方の経験と、
先賢が築き蓄積してきた正統な眼鏡処方の方法論からして、
この(1)〜(4)は、まったく乱暴で粗雑で、
非現実的と言うほかはない眼鏡処方の方法であると、
私は言いたいのですが、貴殿の眼鏡処方における
乱視の矯正は、上記の(1)〜(4)の方法で
相違ないのでしょうか。


質問6
上記の質問5での引用部分に関してですが、

6−1
他覚で得た1D未満の乱視を自覚検査のときに
矯正しないのであれば、
眼は不要な調節をしがちになるものですが、
それではまずいのではありませんか。

6−2
1D未満の乱視は眼鏡で矯正しないということであれば、
矯正(処方)近視度数が眼の近視度数よりも過矯正ぎみになる
恐れがありますが、それでもかまわないのでしょうか。

6−3
左右に1D未満ある乱視の度数が左右で違っていて、
それをどちらも矯正せずに、球面レンズだけで
左右のバランスを見るというのでは、
左右のバランスが正しく取れているとは
言えないのではないでしょうか。

 【参考】 眼鏡処方において、両眼のバランスは
     非常に重要なので、上記の拙著書において、
     私は13ページにわたって
     両眼調節バランステストの解説をしました。 


質問7
《3)オートレフラクトメータで測定した球面度数に、
+3Dを加えた度数を両眼に挿入します。
4)レンズを挿入したら両眼開放の状態で、両眼同時に
視力を確認しながら0.5Dずつ検眼レンズをマイナス側に
換えていきます》
という説明がありますが、

7−1
眼鏡使用歴がそこそこ長い中等度以上の近視の場合で、
眼精疲労などもない眼であっても、やはり3Dもの
雲霧状態から始める必要があるのでしょうか。
それは時間の無駄ではないでしょうか。
無駄ではないとおっしゃるのであれば、その理由を
お尋ねします。

7−2
+3Dを加えたときに矯正視力を見てみる
ということの記述がありませんが、それをしておけば、
そのあとの雲霧解除における無駄な時間を
省けるのではありませんか。


質問8
《5)矯正視力が0.5〜0.7に達したときに、左右の見え方の
バランスを確認します。……中略……片眼鏡ずつ遮蔽板などで隠し、
「左右どちらの眼が見えやすいですか?」と聞きます。》
としてありますが、

8−1
この検査のときには、交互遮蔽よりも、偏光視標やプリズム分割
などによる同時比較のほうがはるかにわかりやすいのですが、
なぜあえて交互遮蔽によって比較をなさるのでしょうか。

8−2
「どちらの眼が見えやすいですか」という尋ね方は、
あまり感心できません。なぜなら、ユガミが少ない、
やわらかく見える、楽に見える、などの「見えやすさ」
で答えてしまうこともあるからです。
「どちらの方がぼやけが少ないですか」という
誤解されない問いかたの方が望ましいのではありませんか。

8−3
左右バランスを取る検査のときには、もしも各眼の
最高矯正視力が一致しないのであれば、その不一致の
ことも考慮に入れないといけませんが、
ここで述べられている方法では、その点が抜けているし、
そもそもこの方法では各眼別の(完全矯正での)矯正視力を
チェックしないのですから、そういう考慮を含んだ
左右バランスの取りかたは無理ですよね?

 【参考】 両眼のそれぞれの最高矯正視力が異なる場合の
     バランスのとりかた(処方度数の求めかた)については、
     上で紹介した拙著書に説明をしています。

8−4
両眼視でこのような屈折検査をする前に、
 ・左右各眼の乱視を正確に把握し、
 ・左右各眼の最高矯正視力を知るために、
単眼(片眼遮蔽)屈折検査か、
あるいは両眼開放での各眼別一次矯正の検査、
の少なくともどちらかの検査が必要なのではありませんか。

【参考】両眼開放での各眼別一次矯正を行なうにあたり、
     それに適した偏光視標がなくとも、
     簡便にその検査が行える方法として
     私が案出した「オクルージョン法」について、
     上で紹介した拙著書で説明をしています。

【了】

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