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眼科と眼鏡店の視力検査の違い



ほとんどの眼科や眼鏡店で不足な点とは


自覚的屈折検査について

眼鏡処方をするにあたっては、屈折検査というものが必要となり、
それの結果を基に、他の検査の結果も考慮に入れて実際の処方度数を決めていくわけですが、
快適なメガネを処方するには、何といっても正確な屈折検査が大前提となります。

屈折検査というのはその眼の屈折異常(近視、遠視、乱視)の度数を求めて、
それを矯正すると最高視力がどれだけ出るのかということを知るものです。

眼鏡店で、
非常に低いレベルの店はオートレフ検査という他覚的な検査の結果を出発点として、
ちゃんとした自覚的屈折検査をせずに、オートレフの値から多少アレンジして、
見えやすそうな度数を求めるという作業だけでおしまいのところもあるようです。

そういう処方のしかたで結果がまあまあOKということもあるのでしょうが、
それはあくまでたまたま何とかなったというだけのことであって、
快適な眼鏡処方を生む可能性の低い方法だと言わざるを得ません。

とにかく、眼鏡処方をする場合には、
自覚的屈折検査によって、
その眼の正確な屈折度数(5mでの完全矯正値)を求めないと話が始まらないのですが、
その検査を省いている店では、もちろんその値(度数と最高視力)の記録も残していないわけです。

眼科では、その点は低レベルの店よりもましで、
眼鏡処方の時であろうがなかろうが、
しょっちゅう自覚的屈折検査を行なって、それをカルテに残しています。

なぜなら、
眼科では「この眼は最高視力がどこまで出る眼か(1.0の視力がでる眼か)」ということが大事なので、
かならず自覚的屈折検査をやって、視力を求め、それを毎回記録しているのです。
(それによって保険点数を請求できるわけです)

ただ、その場合も、
忙しくて荒っぽい眼科では、オートレフで求めた値をテストレンズで組んで、
その度数で視力が1.0以上出れば、それを自覚的屈折検査の結果として記録しているという例もあるようです。

 そこまで乱暴でなくとも、
一般に眼科では、最高視力がどこまで出るかということが大事で、
眼鏡処方と関係のない患者さんの眼の屈折度数については
細かいことは気にしていない傾向があるようです。
また、普通はそれでも特に差し支えはないわけです。

 ところが、眼科において、
眼鏡処方を前提として屈折検査をおこなう場合にでも、
普通の単眼検査(片方の眼を遮蔽して行う屈折検査)を左右別におこなって次に両眼で視力を見るという
「どこでもやっている」普通の屈折検査
ですませているところがほとんどです。

また、眼鏡店の場合には、
その屈折検査の100%近くが眼鏡処方を目的として屈折検査なのですが、
それでもやはり、上記の「どこでもやっているありふれた」方法で終わっている店がたいへん多いのです。

おそらく、
眼科の90%以上、
眼鏡店の半分以上

(あとの半分近くは、自覚的屈折検査と言えるものをしない店と、逆に、ありふれた方法でなく両眼開放屈折検査をする店)
が、
このありきたりの屈折検査で眼鏡処方のための基礎(出発点)になる度数を求めています。

しかし、それではいけないのです。

眼は両眼で共同して見るものですから、
その共同の具合をうまく設定するには、
今述べた「ありふれた検査」では不十分なのです。
眼鏡処方のために屈折検査をするのであれば、最低限必ず、
「眼位のチエック」と「両眼開放屈折検査」をやってほしいものです。

眼位のチェックは、
左の眼を遮閉して右の度数と視力を求め、
次に右の眼を遮閉して左の眼の度数と視力を求めた直後におこなうのがいいです。
その結果、矯正が必要な斜位があるなら、それを適度に矯正しておきます。

眼位(斜位)のチェックをきっちりやっている眼科は少ないです。
眼鏡店の方がそれをやるところは多いと思います。
(ただし、眼鏡店の中でそのチェックをするのは少数派でしょうが)

その次に、
眼鏡処方のための屈折検査とも言える、 両眼開放屈折検査に移ります。

その場合、
両眼で視標を見た状態での各眼別の屈折検査と最高視力を求めるのも、よいのですが、
時間を節約し被検者の疲れを少なくするということで、それは省略してもよいでしょう。
(ただし乱視が強い場合には、その度数と軸度をチエックしておくのがよいと思います)


重要な検査は「両眼調節バランステスト」なのです。

なぜそれは大事かと言えば、それをしないと
快適なメガネとなるための左右の球面(近視や遠視)度の差が求められないからです。

というのは、
他眼を遮閉して求めた度数は、
両眼または片眼に不要な調節
(ものをしっかり見ようとして眼の度数が近視の方に傾くこと)
が介入しているかもしれないからです。

それを知るには「ありふれた方法」では無理なのです。

両眼調節バランステストが、眼鏡処方のための屈折検査のヘソなのですが、
それをおこなっている眼科はごく一部です。
眼鏡店の方がパーセンテージとしては多いでしょう。

なぜなら眼科は、
普段の屈折検査は眼鏡処方とは関係のないもので、
両眼調節バランステストを必要としないので、やりません。
そして、それを眼鏡処方のときにだけやるということはなかなかできないわけです。


 ↓ここからあとは、かなり専門的な内容になります。

両眼調節バランステストの実際の方法も含めて
両眼開放屈折検査については、
拙著書『眼鏡処方の実際手法』に詳しく解説がしてあります。
同書をまだ読んでおられないかたには、ぜひご一読をおすすめします。

その本については、

眼鏡学とは(日本眼鏡教育研究所)
http://homepage1.nifty.com/EYETOPIA/

のホームページ
にご案内があります。(ただし眼鏡技術者向きです)



(例)
たとえば、20〜30代の人の屈折検査で単眼(片眼遮閉)屈折検査で、
R=(1.2×S−2.00)
L=(1.2×S−1.50) 
を得て、両眼では、BV=(1.5)を得たとします。

眼鏡処方と関係のない屈折検査であれば、それでおしまいにしてよいのです。

そして、眼鏡処方をする際には、このままの左右の球面度の差を保ったまま、
少し度を弱くした組み合わせの度数をいくつか見せてみて、
目的にあった度数で、空間視の違和感もあまり感じない度数ということで、
装用テストの結果、たとえば

R=S−1.25
L=S−0.75 BV=(1.2)

として処方する、というような方法をとっている眼科や眼鏡店が多いわけです。

しかし、これは望ましい方法ではありません。

なぜなら、右眼の完全矯正度数であるS−2.00や、
左眼の完全矯正度数であるS−1.50が、
片眼遮閉による調節が片方の眼か、両方の眼に
介入した状態でその値になった、という可能性が少なからずあるからです。

たとえば、実は左眼は、両眼でものを見ているときなら、
S−1.00が完全矯正度数なのかもしれないのです。

片眼遮閉で各眼の度数を視力を求めてから両眼で視標を見せてみたところで、
本当の左右の球面度の差を知ることはできません。

日常の両眼視をしているときの左右の眼の屈折度数の差は、
両眼でものを見ていながら、しかも両眼がぞれぞれ別のものを見るという状態でしか、
求めることはできないのですから、
それを可能とする視標での検査が必要となるわけです。

快適な眼鏡を処方するには、左右での球面度の差をどうするかということが、一つのポイントですが、
それを知るには両眼調節バランステストをしないといけないのです。

両眼開放屈折検査のなかの、ひとつの必須のプロセスに、
両眼調節バランステストがあるのです。

また、両眼でものを見ているときの左右それぞれの眼の乱視の度数や軸度は、
普通の単眼検査(検査しないほうの眼を遮蔽する検査)では、わかりません。

それを知るには、両眼開放屈折検査のなかの「各眼別の一次矯正」が
必要となりますが、それを普通の視力表で容易に実施できるように
私は「オクルージョン法」を案出しました。

それについても上記に紹介した拙著書に解説があります。

次のページに続きます。

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